・日本からの旅行者数は1997年のサイパン(テニアン、ロタを含む)45万人、グアム111万人をピークに、2016年にはそれぞれ6万人、74万人まで激減した。

・各航空会社が直行便を多く飛ばしていたが、2000年以降に徐々に路線を削減。JALは2005年にサイパン路線から撤退。グアム路線も、中部国際空港や関西国際空港から撤退している。安売り合戦の果てに、航空会社が路線を撤退・縮小、ツアーの値段が上がり、露出が減ったことで、日本からの旅行者数が減り続ける。

・日本人の観光客は激減したが、韓国のLCC(低価格航空会社)や中国の航空会社が路線を開設し、地域全体の観光客数としては増加傾向にある。2016年のサイパンを含むマリアナ3島では53万人、グアムは153万人が訪れ、いずれも過去最高を記録した。

サイパンとグアム、日本人が消えた楽園の今 
安売りしすぎたリゾートは復活できるか 
https://toyokeizai.net/articles/-/162183

初めての海外旅行はグアムだった。当時わたしは中学生で、海外にさほど興味はなかったが、両親につれられるままついていった。細かな数字は覚えていないが、パッケージツアーは今よりもずいぶん安価だったように思う。それでも家族4人分の旅費は簡単に出せる金額ではなく、「一生に一度の海外旅行のつもりで行った」と、大人になってから母親に聞かされた。

たしかにグアムやサイパンとえば、昔から日本人に馴染みのあるリゾート地。しかし、最近ではハワイばかりがもてはやされ、すっかり名前を聞かなくなった。この記事を読んで、そういえばそんな場所もあったと、思い出したほどである。

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まさにリゾート地のグアム

いまや日本人観光客の減ったリゾート地、グアム、サイパンだが、ふとコメント欄(記事を読んだ人が自由に書き込み出来る)を見ると、評価がなかなか酷い。20年前に行ったとき、ぼったくり店ばかりだった。サービスが悪いし、指摘しても悪びれる様子もない。ホテルのオーバーブッキングにより、部屋のグレードが下がったりロビーで過ごすはめになったという人も。苦情を出してもあまり分かっていない様子だったとか。全員ではないが、多くの人が「サービスの質が悪かった」と言う。

そして現在は、中国や韓国の進出が進み、中国人、韓国人観光客が増えていると。ホテルに中華系の置物が置かれ、リゾートとは何ぞや?と、記事を読んだわたしも混乱してしまった。


でも、まてよ?これはどこか同じではないか。そう、わたしの住んでいる「ラオス」である。ラオスはグアムやサイパンのようなリゾート地ではないし、かつて大人気だった!という実績も残念ながらない。ポイントはそこではなくて、サービスの質と中国と韓国の進出という2点だ。


わたしは現在、ラオスにある民間企業で働いている。日系企業であり、お客様は日本人であるから、それなりのサービスを求められる。しかしラオスでは、まだまだ観光業としては未熟で、統一したサービスはできていないのが現状。時々、感じの良いラオス人もいるが、それは会社としての統一されたサービスではなく、個人の性格の良さ。お客様に最高のおもてなしを!とまでは言わないが、最低限の約束は守ってほしいものだと日々感じている。

クレームに対する態度も20年前のグアム、サイパンと非常によく似ており、指摘されても何故それがいけないのか、何故お怒りなのかもわからない。クレームを出された理由が理解できないから、その後どういう対応をしたらいいのかわからない。話を聞いて、終わり。それに対して対応するどころか、クレームの理由がわからないから、その後に生かす、修正するようなことはまずない。仕事柄、何度も何度も同じお願いをして、やっとわかってくれる場合もある。

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ローカル店の店員さん。この人懐っこさがラオス人の魅力よね。

しかし、先に述べたように、ラオスは観光業はまだ未熟で、「サービスをする」ことの意味がまだ分からないのである。それは仕方がないことだと思う。日本はおもてなし世界一ともいわれるが、きっとそれは私たちが子供のころから「相手の立場になって考えてみよう」という教育をされてきたから。社会人になっても、先輩方の指導があるから。

でも、ラオスにはそれがない。これはラオスだけでなく、日本以外の国がそうなのかもしれないけど、社会の調和を重んじる日本とは違い、個人の気持ちが一番だからなのではと思う。


現在、グアム、サイパンが20年前と比べてどのように変化したかはわからないが、人の心理として、嫌な思いをした場所にはよっぽど理由がない限り行かないだろう。お金を支払って行くならなおさらだ。ラオスにいて日本人の相手に対するサービスの要求は非常に高いと感じる。それを差し引いても、嫌な思いをしたりがっかりしてしまう出来事があれば、リピーターにはならない。

料金が上がっているならなおさら行く気にならない。サービスの質が理由でリピーターを掴めなかったことが、グアム、サイパンの日本人観光客が減少した理由の一つなのだろうと思う。


もうひとつの中国、韓国の進出も、ラオスと似ているなと感じた。日本にいた時は中国の勢いはニュースなどで見て知っていはいたが、あまり実感がなかった。しかし、ラオスにいるとそのすさまじさは肌で感じることができる。

中華系のホテルやマンション、ショッピングセンターが建ち、鉄道を建設し、中国市場だってある。ビエンチャン市内には中国人の姿が目立つ。そのうち、ラオスが中国になってしまうんじゃと思うほどである。

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中国系の機械などの部品を扱う市場

韓国は主に、サービス業と美容業で進出しているように思う。お洒落なカフェができたなと思うと、たいていは韓国人オーナーの店なのである。

ビエンチャン市内のメコン川沿いにある韓国料理屋は、もともと韓国系カフェだった。オープンして間もなくメニューに韓国料理が増え始め、あっという間に韓国料理店に早変わりした。それほど、韓国料理を求めるお客、韓国人が多かったのだろう。つい最近お店に行ったが、お客はみごとに韓国人しかいなかった。しかも大盛況だった。

化粧品も、韓国コスメをよく目にする。韓国人観光客も多い。特に、20代の若い世代が多いように感じる。ご主人が韓国人の友人が言っていたが、韓国でラオス旅行が流行っているらしい。直行便があるのが大きな理由だろう。

ラオス北部にある自然豊かな村、バンビエンは、ほぼ韓国と言っていいほど韓国人経営の店が目立つ。カフェはもちろん、ゲストハウスや旅行会社も韓国系。旅行者は韓国人にまざって欧米人バックパッカーの姿がちらほら、といった具合。

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バンビエンにて韓国人観光客がアクティビティを楽しむ様子。

中国も韓国も、つくり始めたらどんどん増えて、’臨機応変に対応していく姿が素晴らしい。


グアム、サイパンは日本人観光客が減っても、中国人韓国人が増えているので、観光業としては悪くはないようだ。ラオスに至っても、中国人や韓国人は今よりもっと増えるだろうから、日本人が来なくても困らないのかもしれない。特に中国は陸続きなので、車で来る人も多いという。


日本の旅行業としては、グアム、サイパンに観光客をたくさん呼びたいのは分かる。ラオスも、日本からも旅行者が増え、盛り上がったらと思う。しかし、最低限のサービスの質の向上と、外国からの影響を受けすぎずその国らしさを保つことが、日本人観光客を増やし観光ビジネスとして成功させる鍵なのではと、中国系の店で買い物をし、韓国製のバイクに乗るわたしは思う。